キッチュなアート作品には、どのようなものがあるのでしょうか。キッチュという言葉にはさまざまな使われ方があり、時代やジャンルによっても異なってくるため本記事ではそのすべてに触れることはできませんが、キッチュな作品の特徴の1つとして「あまり一般ウケしないと思われるモチーフを用いている」点が挙げられます。ここでは例として、日本のイラストレーターである
dokukinoko氏のイラスト&ハンドメイド作品をご紹介します。
★乳房やお尻などがモチーフのイラスト
dokukinoko氏のイラスト作品
画像出典:Instagram
dokukinoko氏のイラスト作品
画像出典:Instagram
dokukinoko氏のイラスト作品
画像出典:Instagram
★虫や三つ目がモチーフのハンドメイド作品
蜂のイヤリング
画像出典:dokukinokoのへんてこショップ♪
三つ目ドール
画像出典:dokukinokoのへんてこショップ♪
どれも独特の魅力が溢れている、キッチュなアート作品です。
作者がキッチュな作品を作ろうと意図していなくても、結果としてその作品を見る人にキッチュな印象を与える場合もあります。
たとえば日本の漫画家・芸術家であるろくでなし子(1972-)は、女性器がタブー視されている現在の日本社会を風刺し、その状況を変えようと女性器をキャラクター化し、フィギュアなどを販売しています。
女性器のキャラクターフィギュア
画像出典:新宿眼科画廊
作者本人にとっては大真面目なのですが、結果論的にキッチュな印象を与えている作品です。
芸術家の岡本太郎(1911-1996)は、著書『今日の芸術』において「芸術は爆発だ」と言いました。上手い絵や綺麗な絵を描く必要はない、たとえ下手な絵や醜い絵であっても自分の思うがままに描き、表現のよろこびを噛みしめるべきだ、というのが岡本太郎の主張です。
上手く描く・綺麗に描くということは、無意識のうちにどこかに「基準」を求めていることになるので、かならず何らかの作品の真似になります。「上手い/下手」「綺麗/醜い」という考え方は、そうした「基準」で自分の作品を考えてしまっているということの表れです。そうではなく、自分の表現したいありのままを作品にぶつけることこそが芸術の核心であり、それを岡本太郎は「爆発」だと言ったのです。
つまり、「芸術は爆発だ」の意味は「何物にもとらわれることなく、自分が表現したいと思うありのままを作品にぶつける」ということ。これは「良い趣味/悪い趣味」という考え方にも当てはまるものであり、キッチュであることも1つの立派な個性と言えます。「醜悪美」という言葉もあるように「綺麗」でなく「醜い」ものにも独特の美しさがあり、岡本太郎の考え方は「上手い/下手」「綺麗/醜い」「良い趣味/悪い趣味」といった二元論的な既成概念を反転させるものです。