富士急ハイランドのアトラクション「戦慄迷宮」は、日本一怖いと噂されるウォークスルー型のお化け屋敷。複数のホラーアクターによる脅かしが入るところが特徴的です。かつて猟奇的な人体実験がおこなわれていたという「慈急総合病院」が舞台となっており、無惨な死を遂げた患者や医者が幽霊やゾンビとなって襲ってきます。また、院内は音や匂いの演出にもこだわりがあり、さまざまな仕掛けが五感を刺激してきます。
富士急ハイランドの戦慄迷宮の外観
画像出典:富士急ハイランド 戦慄迷宮|株式会社アルス
富士急ハイランド公式サイトのアトラクション説明ページは、
こちら。
戦慄迷宮の歩行距離は約900メートルで、所要時間は公式サイトには50分と記載がありますが、実際はゆっくり歩いても30分程度です。プレショーを見る時間や待ち時間も含めると50分ぐらいにはなるかもしれません。
お化けの数は時期によって変動がありますが、少なくとも4体、多いときは6〜7体ぐらい出てきます。予想外のところから思いもよらない脅かしをしてくるホラーアクターもいるので、非常にスリルがあります。ポジションによって脅かし方や脅かしの強さ、つまり演出に違いがあるのです。途中で恐怖に耐えられなくなった場合はリタイア扉から退出することが可能。館内にあるリタイア扉の数は2023年現在で7つ(調査済)で、リタイア率は約2割となっています。
なお、怪我や事故が起こらないよう、階段で脅かしをしてくることはなく、また衝突しないよう一定の距離を保って脅かしてきます。もちろんお化けが触ってくることもありません。
戦慄迷宮は安全面に十分配慮した上で、人間の「怖いもの見たさ」の心理に応えて「恐怖」というスリルを体験させてくれる、奇想天外なデザインのアトラクションです。
戦慄迷宮には本物の幽霊が出ると噂されています。特に目撃談として挙がっているのが、戦慄迷宮の脅かし役に女性はいないはずなのに、螺旋階段の下に白衣を着た小さい女の子が座っていたというもの。
しかし、実際は戦慄迷宮の脅かし役は男性がメインであることは事実ですが、男性のアクターが不足している日には女性スタッフをアクターとして入れているようです。つまり、戦慄迷宮の脅かし役に女性はいないという話は嘘です。
また、脅かし役も当然戦慄迷宮で働いている「人間」なので適宜休憩をとっており、一時的に他のアクターと交代しています。そして休憩が終わって自分の脅かしスポットに戻る際、階段に行ったタイミングでお客さんが通った場合は階段で姿を現すと危ない(驚いて転倒し大怪我などに繋がってしまう)ので、しゃがみこむなどして姿をひそめ、お客さんが通り過ぎるまで待つ必要が出てきます。これは決して根拠のない憶測ではなく、螺旋階段の近くにはアクターの待機場所、つまり脅かしスポットがあるのです。(調査済)
なので、「螺旋階段の下に白衣を着た小さい女の子が座っていた」というのは、「たまたま女性スタッフがアクターとして入っていた日、待機場所に向かう際にお客さんが通ったため階段の下で姿をひそめていただけ」と考えることができます。しかし、それすらも恐怖に変えてしまうのですから、これも戦慄迷宮のこだわりの1つなのかもしれません。
なぜ、人はわざわざお金を払ってお化け屋敷という怖いところに遊びに行くのでしょうか。特に戦慄迷宮の利用料金はフリーパスありで1組(4名まで)あたり4000円、フリーパスなしの場合は1組(4名まで)あたり8000円と非常に高額ですが、人気が絶えません。また、これだけ高いお金を払っておきながら、約2割の人は途中でリタイアしています。このように高額であってもお化け屋敷にお金を払う理由の1つとして、「怖いもの見たさという好奇心を満たすため」ということが考えられます。
幽霊やゾンビは現実には存在しないものですが、反面、もしかしたら自分の前に現れるかもしれないと思っている人も多いでしょう。これは現実には存在しない「異世界」に関心が湧くという人間の自然な心理です。
遊園地のアトラクション自体、日常の世界では決して体験できないことを体験するための非日常の世界、つまり「異世界」です。たとえば遊園地にはジェットコースターなどの高所を舞うアトラクションが多数ありますが、人間は鳥のような飛行能力を有していないので、日常の世界では高所を舞うことはできません。しかし、ジェットコースターなどに乗ればあたかも空を飛んでいるかのような感覚を擬似体験することができます。
お化け屋敷もそれと同じで、幽霊やゾンビの存在する異世界に没入し、日常の世界では体験できないスリル(恐怖)を擬似体験しているのです。実際、多くの人はお化け屋敷のお化けはホラーアクター、つまり自分と同じ人間であると分かっていながら、お化け屋敷にいる間は本物の幽霊やゾンビであるかのように錯覚しています。
戦慄迷宮は、日常世界では体験できないスリルを味わわせてくれる「異世界」のアトラクションなのです。