「寄せ絵」とは「はめ絵」とも言い、ある物を集めて1つの形になるように構成したトリックアートのことです。イタリアの画家であったジュゼッペ・アルチンボルド(1526-1593)や、江戸時代の浮世絵師であった歌川国芳(1798-1861)の作品が有名です。
たとえばアルチンボルドの「夏」という作品は野菜や果物を寄せ集めて人間の顔になるように構成、「司書」という作品は本を寄せ集めて人間の顔になるように構成しています。
日本でも同じようなアイデアの作品が見られ、歌川国芳の「人をばかにした人だ」などは人体を寄せ集めて人の顔になるように構成しています。
上下絵とは「逆さ絵」とも言い、上下を反転させても別のイメージとして見えるトリックアートのことです。同じくジュゼッペ・アルチンボルドと歌川国芳の作品が有名です。
たとえばアルチンボルドの「庭師」は、片方は鍋の中に野菜を詰め込んだ絵ですが、上下反転させると人の顔に見えます。
また歌川国芳の「両面相 だるま げどふ とくさかり 伊久」は、上下反転させても若干表情などが変わっただけで、同じように人の顔に見えるという作品です。
隠し絵とは、1つの絵の中に、注意して見なければ分からない他の絵を描き込んであるトリックアートです。「さがし絵」や「ダブルイメージ」とも言います。デンマークの心理学者であったエドガー・ルビン (1886-1951)が考案した「ルビンの壺」や、19世紀から存在する作者不詳の「妻と義母」などがその代表例です。
たとえば「ルビンの壺」は、大きな壺にも見えるし、向き合った2人の顔にも見えるというトリックアートになっています。
また「妻と義母」は「娘と老婆」とも呼ばれる作品で、その名のとおり「奥に顔を向けている若い娘」と「横顔を見せている老婆」の2つに捉えることができます。(若い娘にしか見えない方はネックレスの部分を口として認識、老婆にしか見えない方は口の部分をネックレスとして認識してみてください)
「マジックリアリズム」とは、絵画においては現実の世界と非現実の世界を緻密な描写で同時に描き出し、両方とも現実であるかのように錯覚させる表現手法のことです。「魔術的リアリズム」「幻想的リアリズム」「魔法的現実主義」などとも呼ばれます。カナダの画家であったロブ・ゴンサルヴェス(1959-2017)のトリックアート作品が有名です。
1つの絵の中に現実と非現実の2つの世界が混在している、非常に幻想的な光景です。あえて現実と非現実を混在させてリアルに描くことによって空想も現実の一種のように錯覚させ、もう1つの現実を創り出しています。