フランスの郵便配達夫であったフェルディナン・シュヴァル(1836-1924)は、拾い上げた石を組み合わせて自らの空想を具現化した奇怪な建築物を創り上げました。彼の名前にちなんで「シュヴァルの理想宮」と呼ばれています。
シュヴァルの理想宮(1912)
画像出典:Wikipedia
シュヴァルの理想宮(1912)
画像出典:Wikipedia
この建築物を創るきっかけになったのは、彼が1879年にそろばん玉が重なったような形の石につまずいたことだと言われています。シュヴァルはその石にインスピレーションを受け、さまざまな石を拾うようになりました。そしてそれらの石を用い、1912年まで実に33年もの年月をかけて、たった1人でこの理想宮を建設したのです。
人は空想することが好きな生き物なので、しばしば複雑に入り組んだ迷宮世界を思い描き、そのイメージを心の中に持っているものです。シュヴァルの理想宮は、まるで作者の心の中の迷宮を表しているかのような、探究心を掻き立てられる建築となっています。まさにシュヴァルの理想の宮殿と言えるでしょう。